飛行機の謎 雑誌の感想 日経サイエンス 2020年6月号(1)
本誌に掲載された記事「飛行機はなぜ飛べるのか いまだに残る揚力の謎」を読んだ。
なんで飛べるの?
10年以上前に新書『99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』を読んだときを思いだした。この本は、冒頭で飛行機がなぜ飛べるのかという問いを投げかける。それに対して科学は完全に答えを出せていないことを述べている。一応、科学的な説明は立てられているが、それはあくまで仮説なのだ。
この特集は、現在も飛行機がなぜ飛べるのか、要するに飛行機の揚力はなぜ生じるのかが現時点でも推測の域を出ていないことを述べている。
備忘録として、従来の説明を簡単にまとめる。
分かっていること
- 飛行機の翼は上面が曲面、下面が平面になっている。
- 飛行機の翼は角度をつけて飛ぶ。
- 飛行機の翼の上面は低圧力の空間ができる。
- 飛行中に上下逆さまになっても、そのまま飛行可能
従来の説明
①ベルヌーイの定理
「流速が増加すると、流体の圧力が下がる。逆の場合は圧力は上がる。」
飛行機の場合は空気が流体となる。
飛行機の翼は上面が曲線、下面は平面になっているため、上面を流れる空気は下面に比べてその流速が上がる。
➡上面が下面と比較して、圧力が上がる。よって、圧力が高い下面から圧力の低い上面に対して力(揚力)が加えられる。
・この説明の不足点
- なぜ、上面を通る空気の速度が増すのか説明していない。経験的に曲面を通るほうが空気の流速が上がることがわかっているだけ。
- 上下逆さまになっても、そのまま飛行できる説明ができない。
②作用・反作用の法則
空気が飛行機の翼の下面を通るとき、翼は斜めになっている。そのため、空気は翼にぶつかって下方向に押される。
➡この時、作用・反作用法則により、同じ大きさの力が逆向き(上向き)に生じる。これが揚力となる。
・この説明の不足点
- なぜ上面に低圧力の部分ができるのか説明できない。
まだ完全に説明できない
この特集では、揚力に対する従来の説明とともに新しい仮説も載せている。その内容は複雑だ。正直、私自身も分かっていない部分がかなりある。以下は、その内容をメモしたものだ。
以下の要素がニュートンの第2法則「力は質量と加速度に等しい」に根差して、相互作用している。
- 翼下面の空気の押し下げ
- 翼上面の流速の上昇
- 翼上面の低い圧力の
- 翼下面の高い圧力
ただし、この仮説はまだ完全ではないようだ。
科学は、仮説を立てて実験などで実証していくことで事象を説明するプロセスだ。対象の現象が複雑であれば、それに比例して当然実証は難しくなる。飛行機の揚力について完全に説明できるまで、まだまだ時間はかかりそうだ。